荒磯に挑む熟練コンビ ~八丈小島・尾長メジナをフカセで狙う~
東京から南へ約287km――黒潮洗う絶海の孤島、八丈島。その沖合に浮かぶ無人島「八丈小島」は、全国の磯釣り師たちにとって憧れの地でもある。そんな八丈小島へ、栃木の久保田さんと東京の清家さん、磯釣り歴30年超のベテランコンビが再び挑んだ。
今回の釣行は、「明日明後日は天候が怪しい」「人数が集まらず渡船が出ないかもしれない」という不安を抱えながらも、当日の朝に風速・波高・潮位をチェック。幸い北東の微風、空路1便も無事到着し、渡船も出るとの一報が入った。これを逃す手はない。久保田さんと清家さんはすぐさま渡船場へ向かった。
八丈小島へ、いざ渡船
午前10時、釣り人たちを乗せた渡船が八丈小島へ向けて出港。海上はまさに「凪」。ベタ凪の海面に、島々の影がゆらめくように映り込む。
八丈島本島からおよそ1.5kmの距離に浮かぶ八丈小島――通い慣れたベテランたちは迷うことなく「三十根(さんじゅうね)」を選んだ。最風裏の好ポイントであり、時化の日でも比較的安全に釣座が取れる数少ない磯の一つだ。
「お、思ったより静かだね」
「これは久々に尾長が来るかもな」
そんな会話を交わしながらタックルを組む二人。風は小島の山肌を吹き回して時折ビュッと強まるが、それでも釣り座に立てば快適そのもの。足元は濡れず、潮も穏やかに流れている。条件は揃った。
潮の変化と魚信(あたり)
仕掛けを投入すると、まずはポツポツとアタリが出る。釣れてきたのは小型のアカハタ、そしてイスズミ。さすが八丈小島、序盤から魚影の濃さを感じさせてくれる。
「お、来た来た」
「でも本命じゃないなぁ~」
ベテランの二人も、軽快に竿を操りつつ笑顔がこぼれる。久保田さんが強めのアタリを捉えると、「これは来たか!?」と一瞬期待が走る。しかし上がってきたのは30cm級のメイチダイ。これもまた嬉しい外道だが、今日のターゲットは“尾長グレ”――そう、八丈小島が誇るパワーファイターだ。
その後も、アクリル塗装を施したような鮮やかな体色のキヌベラが釣れたり、サンノジの姿も。魚種の豊富さは八丈ならではだが、なかなか本命の姿は見えない。
尾長メジナは、次回への約束
昼過ぎからは潮も緩み始め、アタリも遠のいていく。何度もポイントを変え、撒き餌の量やタイミングを調整しながら、二人はあくまで本命を追い求めるが、残念ながらこの日は尾長メジナの姿を拝むことはできなかった。
しかし――
「いやぁ、それでも最高だったな」
「やっぱこの景色、この磯、この静けさは、ここだけのもんだな」
納竿の時間。西に傾いた陽が八丈小島の山肌を金色に染め、海面がそれを映して揺れていた。帰りの渡船の中、久保田さんも清家さんも満足げな表情で次回の釣行計画を語り合っていた。
「次は南西風が入ったタイミングで、あっち側の磯に立ってみるか?」
「それもいいな。あそこなら大物の回遊も期待できる」
尾長メジナは、また次の約束にとっておこう。そう思えるほど、この海は奥が深い。そして何より、また来たくなる。
八丈小島での釣行をおすすめする理由
- アクセス良好で遠征しやすい
東京・羽田から飛行機でわずか55分。空路1便の後、渡船に間に合えばその日の午前中から実釣可能。週末釣行にも最適です。 - 魚種豊富なフィールド
尾長メジナ、クチブト、イスズミ、メイチダイ、アカハタ、キヌベラ、サンノジ……などなど、実に多彩。外道も楽しい、まさにパラダイス。 - ベテラン釣り師にも愛される島
30年以上通い続けるベテランも多く、「通い詰めたくなる」だけの魅力がある。釣果だけでなく、風景や雰囲気も唯一無二。 - 変化に富んだ磯とコンディション
風裏になる磯があり、多少の荒天でも安全に楽しめる日があるのも八丈小島の魅力。自然の厳しさと懐の深さを両方感じられる。